333DISCS PRESS
●パリの街角から
「ワインと言えば…」
皆様、いかがお過ごしでしょうか。先日、日本から知人がパリに来た時のこと、一緒にお酒を飲むことになりました。
まずは酒屋さんへ行ってワインを物色。続いては商店街を歩いて酒の肴を探します。
チーズ屋さんの前に差し掛かると、「チーズは私が買います」と言う知人。
ワインの代金を私くしが払ったので、チーズの代金は自分が…と気づかってくださったのでしょう。
しかし、その申し出を丁重にお断りして、隣りにあったシャルキュトリ(charcuterie:豚肉加工品店)で、ソーシソン セック(saucisson sec:サラミ)を買いました。
なお、ワインのつまみと言えばチーズ。
日本では、そんなふうにお思いの方も多いのではないでしょうか。
かくいう私くしも、日本にいた頃は、そう思っていました。
しかし、パリに来て、街にお酒を飲みに行ったり、友人と飲んだりする中で、必ずしも「ワインにチーズ」ではないことを知りました。
例えば、レストランでコース料理をいただく時にも、チーズが運ばれてくるのは主菜を食べ終えた後。
別な言い方をすれば、赤であれ、白であれ、ワインを飲み終える頃に出てきます。
もしもワインとチーズが本当に合うのなら、ワインと一緒に運ばれてくるとか、ワインの進み具合に合わせてチーズが出てきてもおかしくないはずです。
また、街中にある居酒屋さんに行っても、つまみの主流はハムやソーセージ、サラミなど。
チーズを置いているお店もありますが、それをつまみにワインを飲んでいる人は、あまり見かけません。
さらに、ワインの産地にある蔵元を訪ね、ご主人とワインを飲みながら郷土料理をいただいた時のこと。私くしが、ワインとチーズの相性について訪ねたら…、
「こればかりは人の好みだから、合わないとは言わない。でも、ワインもチーズも、それぞれに香りや味わい(コク)を楽しむものだから、お互いが主張し合うと(ぶつかると)合わないこともある。また、ワインとチーズを合わせる基本は、同じ産地のもの選ぶということだけれど、それでも合わないものは合わない。」…と。
かのナポレオンは、フランスのブルゴーニュ地方、ジュヴレ シャンベルタン(Gevrey Chambertin)の赤ワインと、同じブルゴーニュ地方のエポワス(Epoisses)というチーズがお好みであったとのこと。力強い味わいとして知られるワインと、「神の御み足の香り(イギリスでは、豚の足の指の間の臭い!)」と称されるチーズとの組み合わせは、何度試しても私くしは好きにはなれませんでした…。今回は、ワインとチーズについて、少しだけお話をいたしました。
阿部桂太郎
1965年8月22日生まれ。新潟県小千谷市出身。2003年よりフランス、パリ在住。インターネットショップ「フルール ド クール」を営む。好きなことは、旅をすること、食べること、温泉に入ること。