333DISCS PRESS

●チナボンボンブック

こんにちは!チナボンこと正山千夏です。

「本はこころの旅」ということで、私の永遠のテーマ「旅」に関する2冊を今回はご紹介したいと思います。

 

■渡辺一枝「チベットを馬で行く」

椎名誠さんの奥様、渡辺一枝さんがチベットのチャンタン高原を5か月かけて馬で旅した記録。

なんと言っても文章がよいのです。旅の様子はもちろんですが、そこここに挟み込まれる母としての家族への想いや娘への想い。

淡々と綴られているのですが、なぜかこころに沁み入ります。この文章のタイム感はそう、飛行機や自動車の速度ではなく、馬でもっとのんびりゆっくり、あたりのすべてを感じながら旅をしたい、とこの旅に踏み切った一枝さんのきめ細やかな感性のタイム感とまさにシンクロしているのだと思います。

長い旅の間、一枝さんはだんだんとチベット人に近づいていっているかのよう。文章もそれにつれてどんどん研ぎ澄まされ美しくなっていって、最後の方の馬や花や草原の描写の洗練具合には、自動車の速度では決して感じることのないだろう感動で胸がいっぱいになりました!

こうした馬の旅は、チベット人でさえもこれまで誰もしたことがないそうで、それをさらに女性である一枝さんが成し遂げたというのだから驚きです。

チベットの旅とこころの旅。この2つが味わえるとても素敵な本。かなり長編なので、ぜひ文庫本でゲットして(単行本だと大きくて重い…)のんびりと楽しんでもらいたいです。

 

■松岡絵里著 吉田友和写真「世界の市場」

先日「チャンネル三輪舎」でもご紹介した本ですが、あらためてこちらでご紹介させていただきたいと思います。

私が旅をすると必ず行ってしまうのは、実は美術館でもなく世界遺産でもなく市場なのでした。市場に行くとその土地の食卓が見える、生活が見える、人が見える!その国を手っ取り早く知ろうと思ったらまずは市場へ。

ということで、この本は世界約70カ国の市場という市場を網羅した松岡絵里さんと吉田友和夫妻の本。まず目を見張るのはカラフルな野菜や肉、おいしそうな屋台料理、かわいい雑貨など盛りだくさんの写真たち!そして、行ってみなければわからない解説やコラムが満載です。パリのマルシェなど女性向けのオシャレな市場から、南米の魔女市場や泥棒市場、はてはマサイ族のマーケットまで。世界にはこんなにたくさんの種類の市場があったのかと驚かされます。

旅をする人のよきガイドブックになることはもちろんですが、まだ行ったことのない国の市場の風景やコラムを眺めているだけで、なんだかとてもワクワクしてきます。

松岡さんと吉田さんは、結婚を機に2人揃って寿退社し、ハネムーンで607日間に及ぶ世界一周の旅を敢行!その体験をベースに「してみたい!世界一周」を出版。その後も彼らの旅熱は留まるところを知りません。

 

チナボン

バンドsugar plantのヴォーカル&ベース、正山千夏のソロユニット。2005年伊藤ゴロー氏のプロデュースで「in the garden」(333DISCS)をリリース。1994年詩集「忘却セッケン」で第10回早稲田文学新人賞受賞。
http://blog.livedoor.jp/cinnabom/