333DISCS PRESS
「お気に入りの化粧品/こだわりのガジェットは?」
■お気に入りの化粧品は?
女性の方へ:お気に入りの化粧品を紹介して下さい。
【葉田いづみ】全身に使えるスチームクリームがお気に入りです。すっと肌に浸透して、塗ってすぐ水を触ってもヌルヌルしません。アーツ&サイエンスでロゴ入りのものを購入しています。
【甲斐みのり】お化粧品にはまったく凝っていないのですが、女性誌の編集者さんから最新の化粧品をいただくことが多く、あれこれ試すことはできています。自分で買うのはポール&ジョー。AVEDAのアロマミストを香水代わりに愛用中。
【tico moon 吉野友加】化粧品ではありませんが、アロマオイルを何種類かいつも持ち歩いています。時間によって一番しっくりとくる香りで気分を入れ替えています。
【naomi】ペットボトルに砕いたトルマリン原石を入れて、そこにミネラルウォーター(炭酸入りもおすすめ)を入れてシャカシャカとシェイクして、15分くらいおいたものの上澄みを霧吹きに入れて、暑い時に体や髪に吹きかけるとさらさらするのでおすすめです。トルマリン原石を1.5キロくらいお風呂に入れると肌や髪がサラっサラになります。
【岩崎一絵】エッシーのネイルカラー #304 Jazz。肌馴染みの良いベージュとネーミングが気に入っています。バーツビーズのキューティクルクリームはレモンのいい香りがしてささくれに効きます。
【伊藤葉子】LUSHのシャンプーバー「ぴかぴか」とリキッドコンディショナー「菜」、(以前ソリッドシャンプーで「午後のお茶」というのがあったのですが、復活してほしいです。)L’OCCITANEのボンメールソープ「リンデン」です。ツアーや旅行にも必ず持って行きます。
■こだわりのガジェットは?
男性の方へ:こだわりのガジェット(携帯用電子機器類)があれば一つ紹介して下さい。なければアナログな持ち物でも。
【青芝和行】電子辞書はセイコーを選びます、リーダーズ英和辞典が入ってるので。
【FALL 三品輝起】ございません。寺門ジモンさんみたいなこだわりがあるといいのですが。
【fleur de coeur 阿部桂太郎】携帯電話すら持っていません。難しいのはどうも苦手で…。
【goro】ガジェットってやはり機械モノなのかな?携帯は持ってるけど、そんなこだわりも無いし、車も無いし、しいて言えば、タオルケットかな。
【tico moon 影山敏彦】最近購入したショルダーバッグ。ファスナー付きのポケットがたくさんあるところが気に入ってます。
(…ガジェット好きの男性は多いと思ってお聞きしてみたのですが、どうやら偏見だったようです。皆さんはどうですか?)
●パリの街角から
「このひと時を楽しもう!」
こんにちは、フルール ド クールの阿部桂太郎でございます。皆様、いかがお過ごしでしょうか。さて今回は、パリのレストランの楽しみ方についてお話したいと思います。
今から10年程前、新婚旅行で初めてパリに来た時のことを、私は、今でも良く覚えています。それは、レストランに入る時の、あのドキドキした気持ち…。
・どのお店に入ればいいのか
・お料理や飲み物は注文できるのか
・テーブルマナーは大丈夫か
…などなど。
なお、ご旅行でパリにいらっしゃる方々の多くは、多かれ少なかれ、同じようなお気持ちなのではないでしょうか。そこで今回は、この3つについて、私なりの思いを記したいと思います。
まず、「どのお店に入ればいいのか」ということについては、今や問題ではないのかも知れません。日本のファッション雑誌や旅行のガイドブックをめくれば、パリのオシャレなレストランが山ほど紹介されていますし、また、パリのレストランを紹介する本やインターネットのサイトも星の数ほどあるように思います。むしろ現在は、行ってみたいお店をあらかじめお決めになってから、パリを訪れる方が多いのかも知れません。
次に、「お料理や飲み物は注文できるのか」ということについても、あまり心配はないように思います。何故ならば、お料理であれ、飲み物であれ、すべてはメニューに書いてあるからです。
あとは、旅行のガイドブックの付録や、レストランを紹介する本の中に必ずと言っていいほど書いてある、お料理に関する基本的なフランス語と照らし合わせながら、選んでいただければ良いと思います。
なお、ここで大切なのは想像力をはたらかせること。フランス語のいくつかの単語を頼りに、それがどんなお料理なのかを思い描くことです。また、それ以上に大切なのは、結果的にテーブルに運ばれて来たお料理を見る瞬間も含めて、お料理やワイン選びを楽しむこと。レストランによっては、「○○の農場風」とか「××の漁師風」など、それだけでは何だか良く解らないような表現をメニューに用いているところもあるからです。
さらに、注文にはどんなに時間をかけても大丈夫。焦ることなく、ゆっくりとお選びください。そして、お料理の選び方にも決まりはありません。前菜、主菜、デザートと、すべてを注文しなければならないわけではありません。前菜と主菜だけでもいいですし、主菜とデザートだけでもいいのです。もっと極端なことを言えば、前菜だけもいいですし、主菜だけを二品注文したっていいのです。
最後は、「テーブル マナー」について。結論から申しますと、どうかお気になさらないでください。テーブルに着く時の立ち振る舞いがどうだとか、フォークやナイフをどんな風に使うとか、ナプキンはどこに置くかなんて、お店の人はもちろんのこと、周りのテーブルにいらっしゃるお客さんたちも気にはしていません。
最も大切なのは、あなた自身が楽しむこと。美味しいお料理を楽しみ、レストランでのひと時を楽しむことです。このことは、いわゆる高級店に行けば良く解ります。お店の人たちは、お客さんに楽しんでもらうことに常に注意を払い、何かにつけて気遣ってくださいます(しかも、ごく自然に)。
初めにも申し上げました通り、かくいう私もテーブルマナーを気にしていた一人…。 しかしこの国に住み、いろいろなレストランに出かけるうちに、気にしなくても良いことが解ったのです。いいえ、私が「テーブルマナー」といって気にしていたのは実はマナーでもなんでもなく、ただ「周りの人の目」だったのです。そして今になって思えば、私達日本人が普通のこととして身につけ、日頃から無意識のうちに行っているような立ち居振る舞いであれば、どこに行っても恥ずかしくはないと思います。
ただし、たった一つだけ気をつけていただきたいことがあります。それは、香水。過度に香水をつけることは、せっかくのお料理やワインの味や香りを台無しにするだけでなく、周りにいらっしゃる他のお客さんにも迷惑をかけてしまいます。
いつの日か、皆さまがパリにいらした時、楽しいお食事のひと時をお過ごしいただけますように…。今回は、パリのレストランの楽しみ方について、少しだけお話をいたしました。
阿部桂太郎
1965年8月22日生まれ。新潟県小千谷市出身。2003年よりフランス、パリ在住。インターネットショップ「フルール ド クール」を営む。好きなことは、旅をすること、食べること、温泉に入ること。
●国立の街角から
「洋菓子舗ウエスト」
国立市にウエストがあることは意外と知られていないのではないだろうか。そういう私もつい1年ほど前までその存在を知らずに過ごしていた。
住所は国立市ながら、最寄り駅はJR南武線の矢川駅になる。人通りの少ない静かで平凡な住宅街、まさかここにという場所に突如ウエストが現れる。うっかり通り過ぎてしまいそうなほど地味な外装だ。工場直売店なのでティールームはなく、商品販売のみ。とは言ってもあの品のある雰囲気はここにも健在。やや緊張感漂う店内の空気に、近所のスーパーに行くときのような締まりのない格好で来てしまったことを軽く後悔する。
やっぱり、ウエストのケーキは普段着で買いに行くおやつというより、ちょっと特別な日に味わいたいものだと思う。
●西荻の街角から〜トウキョウエコノミー
ヤバ経!
文責:三品輝起
ぼくの頭に震災後ずっと浮かんでたのは、経済学者のスティーヴン・D・レヴィットと、ジャーナリストのスティーヴン・J・ダブナーによる『ヤバい経済学』(東洋経済新報社)っていう、一冊の本だった(注1)。5年前に出会ったことをいまでも感謝するくらい、とーってもイカした本だ(ちなみに音楽は反町隆史氏「ポイズン」が鳴り響いている)。今年の5月末に映画版も公開されたことだし紹介してみたい。
本書は世間知らずのわたくしに「こんなにもあいまいで複雑でまるっきり信じられない今の世の中だけど、物事はちゃんと筋が通っているし、ちゃんとわかるし疑問の立て方さえ間違わなければ思っているよりずっと面白い(原書カバーより)」ってことをユーモアたっぷりに教えてくれた。お陰でデタラメの世界に翻弄されながらも、深夜の吉祥寺サンロードでポイズンを絶唱することなく元気にやってこれたわけだ。
本書を一言でいえば、誰も思いつかない天才的な方法で行われるデータマイニング(データの海でダイビングして、あっと驚く情報を見つけだしてくること)の寄せ集めだ。んで、全編を貫いているテーマがひとつだけあって、それはミクロ経済学の「インセンティブ」という最重要概念である。ちょっと説明してみます。
人はつねにある行動を取るとき、なんらかの判断(そこには損なのか得なのか相手のためか自分のためか善なのか悪なのか、ってのがぜんぶ闇鍋のごとく含まれてる)を主観的に下している。で、その選択行動を誘発するものの正体がインセンティブだ。もし、それさえわかればあらゆる現象を説明できる。とはいえ、じゃあおまえがここに長々と原稿を書くインセンティブは?なに?栄誉?お金?愛?……とか聞かれても困っちゃうように、インセンティブを言い当てるのはめっちゃくちゃ難しい。
彼ら自身はインセンティブについて続編でこう説明してる。「人はインセンティブ(誘因)に反応する。ただし、思った通りの反応でなかったり、一目でわかるような反応ではなかったりもする。だから、意図せざる結果の法則は宇宙で一番強力な法則の一つである。学校の先生にも不動産屋さんにもクラックの売人にも、それに妊娠中のお母さん、相撲の力士、ベイグル屋さん、ク・クラックス・クランにだって、この法則は当てはまる」。
強調しておきたいのは、個々人の判断は「主観的」であり、正しいか正しくないかはまったく関係ない。えてして多くの場合、短期的には正しくても長期的には間違ってる、なんてことが多い(主観的には合理的だけど、客観的には非合理的。なんて言い方もある)。ましてや人々はインセンティブに従っているなんてこれっぽっちも思ってない。彼らの独創的なデータマイニングからのみ、インセンティブの軌跡が魔法のように浮かび上がるのだ。
ちょっと脱線するけど、じゃあ人はなぜ、間違った選択行動をするの? それは与えられている判断材料となる情報が少ないからだ。リーマンショックだって半分以上はこれで説明できる。ちなみに情報の格差はすべて商売の端緒となってるので、ネットで情報が溢れて困っちゃってる人もいる(問屋やら不動産やら旅行代理店あたりに)。
もうひとつは有史以来、人類に取り憑いて拭い去れない呪いのせいだ。ウソ、行動経済学が解き明かしつつある、ありとあらゆるバイアスのせいである。もっとも代表的なものに「双曲割引」ってのがある。「今」と「明日(以降)」との違いを、「明日」と「明後日」の違いよりも大きく評価してしまう錯覚を指す。夏休みの宿題、多重債務、ダイエット、年金破綻などなど、みーんな同じ原理だ。「人間だもの(みつを)」ってこと。ほかにもバイアスは山ほどある、ほんとはそれらを包括する「フレーミング」っていうデッカい理論があるんだけど、これはいつか。
さてさて話をもどそう。ここ数カ月、放射線よりタバコのほうがアレだの、酒がアレだの、酒癖はどうだの、ただちに影響あるだのないだの、東京ニューヨーク間の飛行機がアレだの、ラドン温泉はどうだの、いろんな話を聞いた。
もちろん、ぼくの会話に厳密性はないんだけど、もう少し体裁をキチンと整えたら、それは本書でも多用されてる「リスク比較」と呼ばれる科学的な手法に近づいていく(レビットが得意とするデータマイニングのひとつだ)。上記の場合だと、それぞれの常識的な摂取量の平均をだして、その平均値ごとに発ガン性を割りだして比較する。事故後に国立ガンセンターなんかが発表してたやつも同じ。
真実は闇の中にありながらも、放射線の影響のみならず、ぼくらは社会のリスクについて考え比較し、スーパーの帰りに立ち話したり、電子の海でつぶやいたりしている。99%が又聞きだとしても、まるでみんなが、2人のスティーヴンみたいなことを言い始めてる。そんなこんなで、本書(と反町氏の歌)がぼくの頭に浮かんだっきり、離れないのだ。
いまぼくがヒシヒシと感じているのは、彼らが暴こうと格闘してた世界の裏側に、まるごとすっぽり入ってしまった、っていう感覚だ。先が見えないヴォルデモートばりの暗黒。インターネットに溢れている、あらゆる党派的で、攻撃的な情報の渦をかいくぐるのは至難の技だ。本書にある知性と冷静さと胆力とユーモアは、そんな手助けになるかもしれない(しかも彼らは世界中の嘘つきデータマイニングを暴く専門家でもある)。
最後にはっきりさせておきたいのは、彼らがしていること(相撲の八百長の証明や、中絶の合法化が全米の犯罪を減らした効果の発見などなど)は、身も蓋もないけど平均的な事実はこうなってますよ、っていうお膳立てだ。つまり伝統文化にズルがあってもよく、中絶の問題を犯罪との相関で決める必要もない。そこから先の社会のあり方は別の領域だってこと。
真実に近づくことだけが幸せってわけじゃないし、失ったものは、失ったもの自身の方法で取り戻すしかない。婉曲的な表現で申し訳ないけど、これがぼくの結論だ。ともあれ『ヤバい経済学』をおススメしますっ、クワヘリーニ!
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注1:ちなみに去年には続編『超ヤバい経済学』(同じ会社)ってのもでてる。アル・ゴアを茶化してちょっとした騒動になってたけど……。でも、彼らの先人ともいえる経済学者、ゲイリー・ベッカーの「仕事では純粋に自分のことしか考えてない人が、知り合いに対しては行きすぎなぐらい思いやりがあったりする」という研究から展開していく「身勝手と思いやりの信じられない話」は、時節柄(ちょびっと不謹慎だけど)ぴったしの論考。
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三品輝起(みしなてるおき)
79年生まれ、愛媛県出身。05年より西荻窪にて器と雑貨の店FALL (フォール)を経営。また経済誌、その他でライター業もしている。音楽活動では『PENGUIN CAFE ORCHESTRA -tribute-』(commmons × 333DISCS) などに参加。今年7月、アルバム『LONG DAY』(Loule)を発表。
●乙女歌謡
333pressのこのコーナーでは、日本語の歌に限らず、自分の好きないろいろな音楽をご紹介させていただきます。
8月となり、子どもたちや学生さんは夏休み本番。平日の昼間、街や電車の中でこれからどこかにでかけようとしている小学生のグループに出会うと、私まであの頃の気持ちを思い出し、どきどきと胸が高鳴ります。
6月の終わりから7月の半ばまで、東京・手紙舎さんと、京都・恵文社一乗寺店さんで「甘いノスタルジア~おやつの記憶~」というイベントをさせていただきました。泣きながら、怒りながら、お酒を飲む人はいても、泣きながら、怒りながら、おやつを食べる人はそうはいません。ドーナツ、ホットケーキ、ゼリー、チョコレート、アイスクリーム。お母さんがつくってくれた、おじいちゃんが食べさせてくれた、そんな風に、懐かしもどこか切ない思い出を含んでいるおやつ。実際におやつを食べたり、作家たちのおやつの描写を読むことでいつかの記憶がよみがえるように、そんなイベントにできればと。
そしてそのイベントで流れるサウンドトラックとして三品輝起さんに作っていただいたのが『Long Day』というCDアルバム。少年の、ある夏休みの長い一日が、音楽に。収録の20曲には、「時間」と「番号」が記されています。最初の曲、「目覚め」は朝の5時。最後の曲、「もうお別れの時間」は真夜中。曲についた番号とリーフレットに描かれた地図の中の番号を照らし合わせてみると、少年がそのときその時間、町のどこにいたのかが分かります。
「本当は何もなかった」、三品さんのここしばらくのテーマとのこと。みんな、何にもないところから、何かを見つけ、記憶を重ねたり、忘れたりの繰り返し。「甘いノスタルジア」というイベントの裏テーマ、「思い出すこと、忘れること」を、三品さんの音楽にすくいとっていただくことができた気がします。ジャケットやCDのデザインは、葉田いづみさん。ジャケットの地図は三品さん本人が描いたもの。三品輝起「Long Day」は、三品さんのお店「fall」で販売中です。
すてきな夏、すてきな夏休みを!
甲斐みのり
文筆家。1976年静岡生まれ。旅・お菓子・各地の食材・クラシックホテルや文化財の温泉宿などを主な題材に、女性が憧れ好むものについて書き綴る。http://www.loule.net/